【産経抄】
仕事始めを絵に描いたようないでたちのサラリーマンやOLで、きのうの神田明神は終日、ごったがえした。オフィス街の丸の内や大手町に近いためもあるが、今年はなんと4日だけで約1500社の企業がお祓(はら)いを受けたという。
▼会社経営者が、部下を引き連れ商売繁盛や従業員の安全を祈念して氏神さまにお参りする光景は、死語となりつつある「企業一家」という言葉を思いださせてくれる。だが、政府が検討しているあの制度が導入されれば、神田明神の風景も一変するだろう。
▼あの制度とは、「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」。簡単に言えば、「管理職一歩手前」の事務系サラリーマンの残業代を企業は払わなくてもいい、という仕組みだ。
▼旗振り役となった厚労相の諮問機関は、制度導入の見返りとして週2日相当の休日を義務づけ、一定時間を超える労働には、割増賃金を支払うとしている。自分で仕事の量や配分を決め、実績で賃金が決まる仕組み作りも必要だろうが、企業が新制度を人件費削減の道具に使う疑念は消えない。
▼労働者の働き方は多様になっている、と凡庸な経営者やお役人は言うが、短時間で効率よく高い成果があがる仕事なんて小欄は寡聞にして知らない。額に汗して試行錯誤を重ね、一見無駄な時間とカネを使ってはじめて果実を得られる場合の方が多いのではないか。第一、残業代がカットされれば、士気にも景気にも響く。
▼そんなに良い制度ならまず、霞が関から導入してみてはどうだろう。時間では成果を適切に評価できない業務に従事し、年収が高いという条件にぴったりだ。「官から民へ」範を示す絶好の機会でもある。まあ、お役人の味方である人事院がウンとは言うまいが。
(2007/01/05 05:07)
[01月05日05時07分更新]
引用元:産経新聞
残業代ゼロ 首相「少子化対策にも必要」
2007年01月05日22時01分
安倍首相は5日、一定条件下で会社員の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と述べ、労働時間短縮につながるとの見方を示した。さらに「(労働時間短縮の結果で増えることになる)家で過ごす時間は、例えば少子化(対策)にとっても必要。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ」とも述べ、出生率増加にも役立つという考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
首相は「家で家族そろって食卓を囲む時間はもっと必要ではないかと思う」と指摘。長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、労働者が働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているようだ。
ただ、連合などはサービス残業を追認するもので過労死が増えるなどとして導入に猛反対している。このため、夏の参院選をにらんで与党内でも慎重論が広がっている。
しかし、首相は通常国会への法案提出については「経営者の立場、働く側の立場、どういう層を対象にするかについて、もう少し議論を進めていく必要がある」と述べるにとどめた。
[01月05日22時01分更新]
引用元:朝日新聞
〜コメント〜
残業って労働者側にとって悪ですか?仕事をする上で作業が中途半端に残った場合、欧米人の様に17時だからと帰る事が出来ますか?
日本の労働上での問題は、休憩時間を含めた9時間以内に作業が終わらないの個人の能力問題で、能力不足を棚上げして残業代を欲しがるなんて愚の骨頂だと真剣に考えさせられる環境です。
例えば、転職前も転職後も良く聞く上司の言葉に「経営者の立場に立って考え行動しろ」と有ります。一見すると労働において無駄を省いたり責任を持って業務に当たる事を伝える事の出来る合理的且つ説得力のある言葉に聞こえますが、雇用者と被雇用者は全く違います。
本来、被雇用者である労働者は時間や業務の成果を雇用者である経営者に売る事で収入を得ており、一部の人間はその業務や社内営業次第で出世して経営者側に近付く事が可能になります。一方の経営者は働けば働いただけの対価として収入が大きくなりますが、借金などのリスクを設立当初から軌道に乗るまで負う事になります。
また既に経営者側とも労働者側とも言い難い中間管理職の人間が、役職手当(これすら無い会社も有りますが)の名目上ボーナスが無くなったり残業代が無い現状で、サービス残業が強いられています。
部下の業務の管理の為や顧客の要望に応える為だったりと多くの理由が有って残業をするわけですが、今回のホワイトカラーエグゼプションはこれが経団連の素案では年収400万で決められてしまい、どんなに上記の安倍首相や経団連が奇麗事を並べ(※1)たとしても、実態として多重派遣などの問題(※2)や正社員の待遇を低下させようとする経済財政詰問会議(※3)を野放しにして企業側への罰則強化も無いままでは、待遇悪化への不安は払拭できません。
結局、長期のデフレにより人件費の削減をリストラによって行い、それによる粗利の増加の旨味に企業が味を占めたわけですが、企業だけが儲かる仕組みでは内需はおろか、少子化問題も悪化へと拍車を掛ける事になるでしょう。
家で家族揃って食卓を囲んだとしても、その卓上には何が用意されているんでしょうか?いっぱいの掛け蕎麦ですか?産経新聞の記事にあるように、まずは霞ヶ関から実践して頂きたいですね。
参考:ホワイトカラーエグゼンプション - Wikipedia
※1:経団連:「新しい働き方」重点項目に 経営労働政策委報告
※2:縦並び社会:第2部・読者の声を追って/2 「派遣」、冷たい法律
※3:労働市場改革:正社員待遇を非正規社員水準へ 八代氏示す
※3:経済財政諮問会議のメンバー