政府相手に損害賠償請求訴訟中の拉北者家族22人
10日午前、チェ・ウヨン(女性/35)拉北者(北朝鮮の拉致被害者)家族協議会長はソウル高等裁判所304号法廷の前で涙をこぼした。チェさんと拉北者家族22人が国家を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審初日。裁判は5分で終った。
書面の提出と、次回の開廷日の決定が、収穫の全てだった。1987年、トンジン号に乗った父チェ・ジョンソクさんが拉致されて以来、18年間も待ってきたチェさんにとって、5分とはあまりにも短かい時間だった。
チェさんらは、政府が南北首脳会談を持ちながらも、拉北者を救出する義務を放棄したとし、昨年、国家を相手に訴訟を起こしたが、1審で裁判所は「小貪大失(小さいことのために大きいことを失う)の愚を犯さないための(政府の)高度な政策上の判断だった」とし敗訴判決を下した。被告人の国家側弁護人がこの日裁判所に提出した答弁書にも、「小貪大失の愚を犯さず…」と書かれていた。
チェさんは「どうしてこんなことが言えるのですか。数百人の拉北者の命と人権が“小”だということですか」と話した。チェさんは激昂しているようだった。
ほかの拉北者家族は来なかったのかと聞くと、チェさんは「もう1人来るはずだったけれど、奥さんが高血圧で倒れたそうです。拉北者の家族には災難ばかりが続き、胸が痛みます」と話した。現在、拉北者486人(政府集計)のうち、かろうじて生死が確認されているケースも52人しかいない。拉北者家族のほとんどは拉北者の生死さえ知らずに暮らしている。
今年2月末、記者は30年余前、2度に渡って漁民18人が拉北された慶尚(キョンサン)南道・巨済(コジェ)市・長木(チャンモク)面を訪れた。イ・カンシム(70/女性)さんはハンドバッグの底からビニールに包まれた色あせた新聞を取り出した。
「送還対象拉北者名簿」という題名が書かれた1992年7月8日付の朝鮮日報だった。列挙された氏名の中から、イさんは名簿の最後の方にあった名前ひとつを指差した。チョン・ワンサン。34年前、船に乗ったきり、消息が途絶えている末息子の名前だった。
「巫女が『息子は死んだ』と占ったので、それ以来20年以上死んだものとして祭ってきました。国では生死を確認できないというし、巫女の言葉を信じることしかできませんから」 イさんは目頭を押さえた。息子の行方を探して30年余り。イさんにとって国家は巫女以下の存在だった。
キム・スンソンさん(78/女)は今年2月初め、新聞に掲載された一枚の写真を見つめていた。脱北者団体によって公開された拉北漁師36人の写真だった。そこには、二男キム・オクリュリュの顔があった。既に52歳になる。
キムさんは「息子が生きているなんて。これまで供養してきたのに…。やるせない」と繰り返した。
キムさんはこれまで、陰暦9月9日(正確な死亡日が分からない場合の供養日)に息子の供養をしてきた。
拉北者の安否すら分からぬまま、供養してきたのはキムさんだけではない。ユ・ウボンさん(69/女)は、夫(パク・ドゥヒョンさん/69)の供養をやはり陰暦9月9日に行ってきた。
ファン・ファボンさん(60)は、父親(ファン・ヨンシクさん/86)が行方不明になった陰暦12月9日に供養を行ってきた。
パク・ジョンスンさん(女)は「名節(韓国固有の盆・正月)ごとに夫(イ・ジェミョンさん/62)の供養をしてきたが、いつか帰ってくる気がし、「ジョル」(韓国伝統の礼の仕方)はできなかった」と話した。
130世帯が住んでいた長木面のノンソ村には、集団で拉北された後から1年余りにわたり、3〜4人の私服警官が駐在していた。
オク・チョルスンさん(74/女)は「夫(パク・ドゥナムさん/72)が戻ってきたら知らせてくれ」という警官のズボンをつかみ、「生きているかどうかだけでも教えてくれ」と頼んだことをいまだに生々しく覚えている。
2人の息子が拉北されたパク・ギュスンさん(80)は当時、台所で声を殺して涙を流した。根ほり葉ほり詰問する警察官の前で、パク・ギュスンさんはやむなく罪人となった。息子を失った悲しみは心の中にとどめた。
イ・ガンシムさん(女)は、息子について調べてやるというブローカーにだまされ、自分の家まで失った。仁川(インチョン)海洋警察に所属する「キム・マンス」を名乗っていたが、確認するすべがなかったと話した。イ・ガンシムさんは30年以上たった今でも、この詐欺師の名前をはっきりと記憶している。
巨済島=イ・ソンフン記者inout@chosun.com
アン・ジュンホ記者libai@chosun.com
[05月10日19時47分更新]
引用元:朝鮮日報
〜コメント〜
日頃、日本に対して民族意識を重要視して批判している韓国ですが、北朝鮮による自国民の拉致は同族である事等を理由にして二国間の障害と認識するのは、ダブルスタンダードではないでしょうか?
北朝鮮と休戦状態である事を忘れ北朝鮮の核保有や実験を擁護するのは、韓国による核関連実験と北朝鮮の核とに関わりがあり、それを暴かれないようにするためでしょうか?
どちらにしろ拉致被害者に対する態度からも、民族意識というプライドすら本物なのか疑わしいと言えそうです。
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- 国内:ニュースではないのですが日刊スポーツのコラムより