「とちぎ子ども学会社会部会」が企画した北朝鮮による拉致被害者の蓮池薫さんの兄、透さんの講演会が、会員一人の強硬な反対により、主催団体と演題の変更に追い込まれていたことが二十四日、分かった。
《「嫌がらせ、大人げない」関係者》
変更に追い込まれたのは、宇都宮市駒生町の「とちぎ健康の森」で二十七日午後二時から行われる予定の蓮池透さんの講演会。同学会のメンバーが、「北朝鮮に誘拐された日本人を救う青年の会」の山本閉留巳(へるみ)会長と親しかったことから、同学会会員の賛成を得て計画した。拉致被害者の家族連絡会のメンバーが県内で講演をするのは初めて。
「とちぎ子ども学会」は子供にまつわる諸問題について調査研究を行っている団体で、県内の研究者や市民らで組織されている。今回の講演会は、二十五年間も家族を探し続けた拉致被害者の家族に話を聞くことで、家族のきずなが希薄になった現代に、改めて家族の大切さを見つめ直してもらおうと企画した。
「家族が歩いてきた道」と題した講演は、これまでの経緯にとどまらず、人権問題としての拉致に家族がどう取り組んできたかという同学会主催ならではのテーマも含まれる予定だった。講演依頼を受けて、蓮池さんは「そういった要素を含んだ講演をするのは初めてだが、これを機に自分も勉強したい」などと前向きな回答をしていたという。
ところが、関係者によると、「新聞に講演内容が掲載された今月六日ごろから、参加申し込み用の電話に、ワン切りなどの電話が殺到。一時は、一分間に六回も電話がかかってくる状態になった」という。
同学会で調べたところ、電話は同学会の会員から発信されていた。このため、同学会のメンバーがこの会員から事情を聴いたところ、「拉致というのは問題のほんの一部。北朝鮮問題も解決していないのに、講演会には納得できない」などと主張したという。
他の会員らからは「家族という視点から講演会を企画するのはすばらしい」などの声があがったが、混乱を避けるため、同学会は十九日、仲間らと「蓮池透さん講演会実行委員会」を設立。主催団体を同委員会に移すとともに、講演の演題も「被害者と家族に残された時間」に変更した。
関係者は「主義主張が通らないからいやがらせをするのは大人げないと思う。でも蓮池さんに失礼があってはいけないので」と変更の理由を話している。
講演会は二十七日午後二時から「とちぎ健康の森」にて。参加費は無料で資料代五百円。定員は四百人(当日先着順)。
問い合わせは「蓮池透さん講演会実行委員会」TEL028・653・6625へ。